出張買取とは?家に来てもらう前に知っておきたい仕組み

チラシを見て「不用品をまとめて査定します」という業者を呼ぶと、玄関に上がったところで「貴金属はありませんか」と聞かれることがあります。
自宅に来てもらって物を売る取引は特定商取引法の「訪問購入」にあたり、法律で決められた書面を受け取った日から8日間はクーリング・オフができます。
その期間内なら、売る約束をした品物でも引き渡しを断れます。
訪問購入に関する相談は2025年度に7,523件寄せられました(国民生活センター 訪問購入の相談件数/2026年9月時点)。本記事では、出張買取にかかる訪問購入の規制・古物商許可と一般廃棄物収集運搬業の許可の違い・自治体の粗大ごみとの使い分けを解説します。
出張買取は「訪問購入」にあたり、8日間はクーリング・オフできる
購入業者が店舗以外の場所で契約して物品を買う取引は、特定商取引法の訪問購入に分類されます。
自分から電話で呼んだ場合も、チラシを見て申し込んだ場合も同じ規制がかかります。
法律で決められた書面を受け取った日から8日以内であれば、理由を言わずに契約を解除できます。
8日間は品物を渡さず手元に置ける
この期間には引渡し拒絶権という仕組みがあり、契約が成立していても物品を渡すのを断って構いません。
断っても債務不履行にはなりません。
業者は物品を受け取る際に、消費者にこの権利があることを告げなければならないと定められています。
告げずに車へ運び込もうとする相手は、その時点で法律の求めを外しています。
現物が業者の手に渡ると、話は一気に面倒になります。
期間内に第三者へ転売されたときは、業者が第三者の情報を速やかに通知する義務を負いますが、通知が届いたからといって品物が戻るとはかぎりません。
売ると決めた品でも、8日が過ぎるまで家に置いておくという選び方ができます。
書面が渡されないと、8日の数え方が決まらない
起算日は契約した日ではなく、法定の書面を受け取った日です。
品目・価格・支払方法などを記載した書面を交付する義務は業者側にあります。
これが渡されなければ期間はいつまでも始まりません。
裏返せば、口頭で金額だけ告げられて現金を置いていかれた取引は、日付の証拠が何も残らない状態になります。
金額を聞いた段階で、まず書面を求めてください。
押し買いの断り方は出張買取は危険?押し買いを断るための対処法で解説しています。
出張買取・不用品回収・粗大ごみは、品物の出口が違う
同じトラックが同じ家に来ても、品物の行き先と根拠になる許可は別です。ここを分けておかないと、「まとめて無料で引き取ります」という言葉が何を意味しているのか判断できません。
| 手段 | 品物の行き先 | 根拠になる許可 | お金の向き |
|---|---|---|---|
| 出張買取 | 業者の商品として店舗や市場へ回る | 古物商許可(都道府県公安委員会) | 売主に代金が入る |
| 不用品回収 | 廃棄物として処理施設へ運ばれる | 一般廃棄物収集運搬業(市区町村) | 依頼者が料金を払う |
| 自治体の粗大ごみ | 市区町村の処理施設へ運ばれる | 自治体自身が主体になる | 手数料を払う |
実家の片づけでは、値が付くものと捨てるものが同じ部屋に混ざっています。
一度の訪問で両方を持ち出すなら、業者は買取と廃棄の2つをやると言っていることになり、必要な許可も2つそろっていなければ筋が通りません。
自治体と業者のどちらに何を出すかという全体像は不用品回収とは?自治体と業者の使い分けで解説しています。
許可は2つ|買い取るなら古物商、廃棄物として運ぶなら市区町村の許可
業者の見分け方でいちばん確かなのは、社名でも口調でもなく許可の種類です。名刺やウェブサイトに許可の名称と番号が書かれているか、そこから確認します。
買い取る側に要る古物商許可
中古品を買って売る営業には、都道府県公安委員会の古物商許可が必要です(古物営業法3条)。
この許可を持つ業者は、取引の相手の本人確認と記録を義務づけられています。
査定の場で運転免許証などの提示を求められるのは、この記録のためです。
逆に、身元を一切確認せずに現金だけ置いていく相手は、その記録を残していないことになります。
廃棄物として運ぶ側に要る一般廃棄物収集運搬業の許可
家庭から出た不用品を廃棄物として運んで処分するには、その市区町村の一般廃棄物収集運搬業の許可が要ります(廃棄物処理法7条)。
産業廃棄物収集運搬業の許可では家庭ごみを運べません。
「産廃の許可があります」という説明は、家庭の家財を運ぶ根拠にならないのです。
「無料回収」を名乗って住宅街を回るトラックは、この許可を持たない場合が多いと指摘されています。
渡した家財が不法投棄されれば、出した側にも説明を求められることがあります。
遺品整理士は一般社団法人遺品整理士認定協会の民間資格で、国家資格ではありません。
持っていることと、廃棄物を運べることは別です。
許可の確認手順は不用品回収業者はどう選ぶ?許可番号で見極める方法と出張買取業者の古物商許可と査定額の見極め方で解説しています。
出張買取の査定額は、付属品と製造年と状態で動く
品目別の買取相場について、公的な統計も業界団体の公表資料も確認できませんでした。
そのため、この記事では「◯◯なら何万円」という金額を書きません。
代わりに、査定額が何で動くのかを押さえておくほうが役に立ちます。
査定を左右するのは、箱・リモコン・保証書などの付属品がそろっているか、製造年がいつか、傷や汚れや動作の状態がどうか、そして中古市場の相場がその時点で上がっているか下がっているかです。
金や貴金属のように相場が日々動くものは、同じ品でも月が変われば金額が変わります。
値が付きやすい品物
中古市場で取引量の多いものは、査定の基準がはっきりしています。
製造年の新しい家電、ブランドの食器、貴金属、大工道具や電動工具、楽器、カメラなどが挙がりやすい品目です。
まとめて箱に入れず、品目ごとに並べておくと査定が早く進みます。
値が付きにくい品物
実家に残っている大物ほど、買い手がいません。
大型の婚礼家具、古い仏壇、来客用の食器を大量に収めた戸棚、製造から10年以上たった家電は、値が付かないどころか処分費がかかる側に回ります。
「買取に来た」はずの業者が最後に処分費を提示するのは、この部分です。
売れるものと処分するものを分けた見積書を求めてください。
費用の内訳と出張料・査定料の扱いは出張買取の相場と品目別の目安で解説しています。
家具と大型家電は、出張買取でもクーリング・オフの対象から外れる
訪問購入の規制には適用除外があり、政令で品目が列挙されています。次のものは、自宅で買い取られても8日間のクーリング・オフや引渡し拒絶権が働きません。
- 自動車(二輪車を除く)
- 家具
- 有価証券
- 家電(携行できるものを除く)
- 書籍、CD・DVDなど
婚礼家具や大型の冷蔵庫をその場で運び出されてしまえば、あとから8日ルールを持ち出して取り戻すことはできません。
一方、貴金属・着物・小型の家電・時計などは対象に入ります。
国民生活センターに寄せられている相談でも、不用品買取を名目に訪問しながら貴金属の買取を強く求める手口や、書面も代金も渡さずに物品を持ち去る事例、クーリング・オフを申し出ても一部しか返ってこない事例が挙げられています。
高齢者の被害が目立つという傾向も示されています。
| 年度 | 訪問購入の相談件数 |
|---|---|
| 2023年度 | 8,623件 |
| 2024年度 | 7,909件 |
| 2025年度 | 7,523件 |
| 2026年度 | 826件(5月31日現在) |
出典は国民生活センターの集計です(訪問購入の相談件数/2026年9月時点)。
件数は年度ごとに少しずつ減っていますが、2026年度の途中集計は前年同期の823件とほぼ同じ水準で並んでいます。
頼んでいない訪問や電話での勧誘は不招請勧誘として禁じられ、一度断られた業者はその訪問時もその後も勧誘してはいけません。
断ったのに話が続くなら、それ自体が規制に反する行為です。
出張買取を呼ぶ前に、通帳と権利証を抜き出しておく
査定のために家具や引き出しを空にする作業は、相続の手続きに要る書類を家から出してしまう作業と同時に進みます。
仏壇の引き出しに通帳、押し入れの奥に権利証、封筒に入ったままの保険証券が残っていることがあります。
業者を呼ぶ前に、次のものを探して1か所にまとめておいてください。
- 通帳とキャッシュカード
- 保険証券と年金手帳
- 不動産の権利証、登記識別情報の通知書
- 遺言書
- 印鑑と印鑑登録証
- 貸金庫の鍵と契約書
- 有価証券、借用書
これらを処分してしまうと、口座の解約も名義変更も止まります。
とくに遺言書は、自筆証書遺言と秘密証書遺言なら家庭裁判所の検認が必要で、封を開けずに持ち込みます。
公正証書遺言と、法務局の保管制度を使った自筆証書遺言は検認が要りません。
仏壇と位牌は家財として売らない
仏壇・位牌・墓は祭祀(さいし)財産として扱われ、相続財産とは別に1人が引き継ぎます(民法897条)。
指定が無ければ慣習によって決まり、それでもまとまらなければ家庭裁判所が定めます。
この役目を引き受ける人が決まらないうちに業者へ渡すと、後から親族の間で問題になります。
片づけ全体の順番は遺品整理とは?何から始めるかを順番どおりにで解説しています。
相続した家財を売る前に、相続人全員で決めておくこと
亡くなった親の家に残る家財は、遺産分割が済むまで相続人全員の共有です。
兄弟の誰かが一人で業者を呼び、値の付いたものを現金に換えてしまうと、金額の話がそのまま感情の話に変わります。
査定書と買取明細を残し、何がいくらで売れたのかを全員が見られる形にしておけば、分配の相談を数字で進められます。
相続放棄を考えている人がいるなら、売る前に確かめることがあります。
相続財産を処分すると単純承認をしたとみなされ、放棄ができなくなるためです。
申述の期限は、自分が相続人だと知った時から3か月です(民法915条)。
この期間に判断が間に合わないときは、家庭裁判所へ期間の伸長を申し立てられます。
放棄の可能性が残っているうちは、家財を動かさずに置いておく判断になります。
家財に相続税がかかるかどうかは、遺産全体の額で決まります。
基礎控除は3,000万円+600万円×法定相続人の数で、相続人が3人なら4,800万円です。
これを超えるなら、相続の開始を知った日の翌日から10か月以内に申告と納付をします。
貴金属や骨董のように値が付くものが多く出てきた場合は、売却の前に税理士へ相談する段階です。
量と搬出の手間で決める、粗大ごみとの使い分け
手段は3つありますが、選ぶ基準は「値が付くものがどれだけあるか」と「いつまでに家を空けるか」の2点に集約されます。
値が付くものがまとまっているとき
貴金属・工具・比較的新しい家電などが一定量あるなら、買取を先に通したほうが合理的です。
売れた分は処分費が発生せず、搬出も業者がやります。
ただし査定額はその場で決まるため、金額を聞いてから考えたい場合は、書面を受け取って8日の期間を使ってください。
値が付かない大物だけが残っているとき
婚礼家具や古い家電が中心なら、自治体の粗大ごみのほうが手数料は安く済みます。
代わりに、申込みから収集日までに日数がかかり、指定場所までは自分で運び出す必要があります。
二階からタンスを下ろせるかどうかが、そのまま選択を左右します。
申込みから収集までの流れは粗大ごみの出し方|申込みから収集まで4ステップで解説しています。
量が多く、期限が決まっている場合は、許可を持つ回収業者に有料で頼むほうが現実的でしょう。
先延ばしにすると、費用は静かに増えていきます。
家財が残っている間は売却も賃貸も進まず、固定資産税と光熱費の基本料金が毎年出続けます。
建物の名義が親のままなら、不動産を取得したことを知った日から3年以内の相続登記が義務で、正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象です。
2024年4月1日より前に相続した不動産も対象で、その場合の期限は2027年3月31日です。
さらに管理が行き届かない状態が続き、市区町村から管理不全空家や特定空家に指定されて勧告を受けると、固定資産税の住宅用地特例が外れます。
放置すれば自動で税額が上がるのではなく、指定と勧告という段階を踏みます。
家財を出したあとの建物の活かし方は空き家バンクとは?登録の条件と使い方で解説しています。
よくある質問
出張買取は本当に無料で来てもらえますか
出張料・査定料・キャンセル料の扱いは業者ごとに違います。
電話で申し込む段階で3つとも確認し、「無料」という回答なら書面にも記載してもらってください。
査定額に納得できずに断ったときの費用が無料かどうかまで聞いておくと、当日の判断に迷いません。
査定額に納得できないときは断れますか
断れます。
一度断られた業者は、その訪問時も、その後も勧誘してはいけないと定められています。
話が続くなら、その行為自体が規制に反します。
玄関で長時間粘られる状況になったら、家族へ連絡するか、お住まいの市区町村の消費生活センターに相談してください。
電話で「貴金属はありませんか」と聞かれました
頼んでいない相手への勧誘や、買い取りたい物品について意思を確認する行為は禁止されています。
業者は勧誘の前に、事業者の氏名・勧誘の目的・買い取る物品の種類を告げる義務があります。
名乗らずに品目だけ聞き出そうとする電話は、それだけで手口として警戒する材料になります。
契約書をもらえなかったときはどうなりますか
クーリング・オフの8日間は、法律で決められた書面を受け取った日から数えます。
書面が渡されていなければ、期間はまだ始まっていません。
会社名・担当者名・連絡先・品目と金額をその場で自分の手で書き留めておくと、後から相談するときの材料になります。
すでに品物を持ち帰られてしまいました
対象品目であれば、期間内にクーリング・オフを通知して契約を解除できます。
通知は書面で出し、控えを残してください。
業者が期間内に第三者へ引き渡した場合は、第三者の情報を消費者へ速やかに通知する義務があります。
連絡が取れなくなったときは、控えた会社名と許可番号を持って消費生活センターに相談してください。
家具や大型家電も出張買取してもらえますか
引き取る業者はありますが、家具と携行できない家電は訪問購入の適用除外に入るため、8日間のクーリング・オフは働きません。
値が付かず処分費の側に回ることも多い品目です。
買取の対象になるのか、処分として料金がかかるのかを、品目ごとに分けた見積書で確認してください。
遺品整理業者に頼めば買取までしてもらえますか
買取と廃棄を一度に頼むなら、業者側に古物商許可と、その市区町村の一般廃棄物収集運搬業の許可の両方が必要です。
片方しか無い場合は、提携先へ回す形になっているかを聞いてください。
遺品整理士は民間資格なので、資格の有無とは別に許可を確認します。
まとめ
出張買取は特定商取引法の訪問購入にあたり、書面を受け取った日から8日間はクーリング・オフができて、その間は品物の引き渡しも断れます。
ただし家具と携行できない家電は適用除外で、この保護が働きません。
業者を見分ける基準は、買い取る側の古物商許可と、廃棄物を運ぶ側の一般廃棄物収集運搬業の許可がそろっているかどうかに尽きます。
査定額を左右するのは付属品・製造年・状態・その時点の相場で、公的な相場統計は確認できていません。
金額をその場で受け入れる必要はなく、書面を受け取って考える時間を取れます。
ぜひ本記事の許可の2種類と適用除外の品目リストを参考に、電話で呼ぶ前に確認する項目を決めてください。


