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実家の片付けが進まないとき|親と揉めない進め方を解説

実家の片付けが進まないとき|親と揉めない進め方を解説

押し入れから出した段ボールを、親が黙って元の場所に戻します。

実家の片付けが止まるのは、物が多いからではなく、誰が捨てると決めるのかが決まっていないためです。

親が元気なうちは、家の中の物はすべて親の所有物です。

亡くなったあとは事情が変わり、家財も相続人全員の共有財産になります。

ここで通帳や不動産の権利証を先に捨ててしまうと、相続の手続きそのものが止まります。

相続登記は不動産を取得したことを知った日から3年以内が義務で、2024年4月1日より前に相続した不動産も対象です。

本記事では、捨てる前に探す書類の一覧・親と決定権を分ける進め方・見積書で確かめる費目・相続放棄の3か月と登記の3年という期限まで解説します。

終活断捨離で最初に決まるのは、物ではなく「今それが誰の物か」

手が止まる原因は、判断基準ではなく立場のほうにあります。

目の前の食器棚を空にしてよいかどうかは、それが親の財産なのか、相続人全員の財産なのかで答えが変わるからです。

同じ家、同じ物でも、親が生きているかどうかで扱いがまるごと入れ替わります。

親が元気なうちは、家の中の物は親の財産

親が存命なら、家財の所有者は親本人です。

子が良かれと思って処分しても、他人の財産を同意なく捨てたことになります。

帰省した週末に一気に運び出すと、次の帰省で押し入れを開けさせてもらえなくなることがあります。

作業は家族が手伝えます。

捨てるかどうかを決めるのは親です。

この2つを分けないまま進めると、片付いた量に比例して会話が減っていきます。

終活断捨離という言葉が本来指しているのも、本人が自分の意思で持ち物を減らす行為のほうでした。

亡くなったあとは、家財も相続人全員のもの

亡くなった時点で、家の中の物は預金や不動産と同じく遺産に含まれます。遺産分割が終わるまでは相続人全員の共有ですから、一人の判断で価値のある物を売ったり捨てたりすると、あとから精算を求められることがあります。

相続放棄を検討している段階では、さらに慎重に扱ってください。

相続財産を処分すると、相続を承認したものとみなされて放棄ができなくなります。

放棄の期限は、自分が相続人だと知った時から3か月です(民法915条)。

亡くなった日からではありません。

借金の有無がまだ分からないなら、家財には手をつけず、家の施錠と書類の確保だけで止めておきます。

終活断捨離・生前整理・遺品整理は、主語と持ち主が違う

3つの言葉は同じ作業を指しているように見えて、誰が主語なのかが違います。この違いが、そのまま「誰の同意が要るか」の違いになります。

言葉主語(動く人)家財の持ち主捨てる判断をする人
終活断捨離親本人親親
生前整理親と家族親親
遺品整理相続人相続人全員の共有相続人全員(分割前)

家族のほうから「断捨離しよう」と持ちかけた時点で、主語が入れ替わっています。

親の側から見れば、自分の持ち物を家族の都合で減らす提案です。

同じ作業でも、親が減らすのを手伝うのか、家族が減らすのを親に承諾させるのかで、話の通り方が変わります。

亡くなったあとに始める場合は、そもそも作業の名前が遺品整理に変わり、必要な手順も書類も別物になります。遺品整理を何から始めるかの順番で解説しています。

捨てる前に探すもの|通帳と権利証を処分すると手続きが止まる

袋詰めより先にやることがあります。

家の中を一周して、次のものを回収してください。

処分してしまうと、相続の手続きがその場で止まります。

  • 通帳とキャッシュカード
  • 保険証券
  • 年金手帳
  • 不動産の権利証と登記識別情報
  • 遺言書
  • 印鑑と印鑑登録証
  • 貸金庫の鍵と契約書
  • 有価証券
  • 借用書

とくに貸金庫は、鍵と契約書が見つからないと存在にすら気づけません。

借用書は、見つかってはじめて相続放棄を検討する材料になります。

財産の全体像が分からないうちに家財を減らすと、判断に使う手がかりまで一緒に捨てることになります。

遺言書が出てきたら、封を開けない

自筆証書遺言と秘密証書遺言は、家庭裁判所の検認が必要です。

封をしたまま持ち込んでください。

公正証書遺言と、法務局の自筆証書遺言書保管制度を使ったものは検認が要りません。

保管制度は2020年7月10日に始まった仕組みで、法務局が原本を預かっています。

手元にある紙が保管制度のものかどうかは、法務局の発行した書類が一緒にあるかで見分けがつきます。

探す場所は、親の生活動線に沿う

仏壇の引き出しに通帳、押し入れの奥に権利証、封筒に入ったままの保険証券が残っていることがあります。

郵便物も手がかりになります。

金融機関や保険会社からの通知が届いていれば、そこに取引先の名前が書かれています。

しばらく届いていない郵便は玄関の靴箱の上や新聞の束に紛れていることがあるため、紙の束はまとめて縛らずに一度開いてください。

回収した書類をどう使うかは、遺品整理を自分でやる手順と先に探す書類のリストで解説しています。

親と揉めずに断捨離を進める順番は、使っていない場所から

親が拒むのは物そのものではなく、自分の家の中で自分に決定権がなくなる状態です。順番を変えるだけで、同じ量の片付けが通ることがあります。

手をつけるのは、物置・納屋・使っていない部屋から

最初に開けるのは、親が日常的に使っていない場所です。

物置、納屋、車庫、子どもが出たあとの部屋あたりが該当します。

ここには親が存在を忘れている物が多く、処分しても生活が変わりません。

作業が進んだ実感が先に出ると、次の区画の話がしやすくなります。

逆に、寝室・仏壇まわり・タンスの中身は最後に回してください。

思い出の品と印鑑や通帳が同じ引き出しに入っていることがあり、この2つは扱いが違います。

片方は親が決める物、もう片方は先に確保する物です。

「捨てる」と聞かずに、使う頻度と置き場所を聞く

「これ捨てていい?」という聞き方は、答えが「いる」か「いらない」の二択になります。

二択では親はほぼ「いる」と答えます。

聞き方を、最後に使ったのはいつか、どこに置いておきたいか、に変えてください。

使っていない事実は親のほうが分かっています。

写真に撮ってから手放す方法もあります。

人形や食器のように、物としては置き場がなくても記憶を残したい物には向いた進め方でしょう。

ただし、これを家族が押し切る道具に使うと、結局は同じ話になります。

兄弟の希望は、作業に入る前に聞いておく

形見分けでもめるのは、たいてい処分が終わったあとです。

着物、時計、道具類、写真のアルバムあたりは、先に一覧を共有してください。

遠方で来られない兄弟がいるなら、部屋ごとの写真を撮って送るだけでも、あとからの「勝手に捨てた」を防げます。

物の量が多く、費用の負担割合から話し合いになりそうな場合は、片付け費用を兄弟のうち誰が払うかの決め方で解説しています。

断捨離の費用は量と階数で決まる|見積書で確かめる項目

実家の片付けにかかる金額は、部屋数だけでは決まりません。同じ間取りでも見積額が動くのは、次のところです。

  • 物の総量(トラックの台数と作業人数が変わります)
  • 階数とエレベーターの有無
  • 玄関からトラックまでの距離と、駐車できる場所
  • 分別をどこまで自分でやるか
  • 買い取れる物があるか
  • 庭・物置・車庫を作業範囲に含めるか

この6つを伝えないまま電話で総額だけ聞いても、当日に増額されます。訪問見積もりを取り、費目ごとの内訳を書面でもらってください。

確認する項目見るところ
費目の内訳人件費・車両費・処分費が分かれて書かれているか
追加料金の条件何が出たら、いくら増えるのか
許可一般廃棄物収集運搬業の許可番号と、どの市区町村の許可か
買い取り作業費から差し引く場合、品目ごとの買取額が書かれているか
作業範囲庭・物置・車庫・ベランダを含むか

許可は「一般廃棄物収集運搬業」で見る

家庭から出た不用品を運んで処分するには、市区町村の一般廃棄物収集運搬業の許可が要ります。

買い取るなら、都道府県公安委員会の古物商許可が別に必要です。

産業廃棄物収集運搬業の許可では家庭ごみを運べません。

住宅街を回る「無料回収」のトラックは、この許可が無いことが多く、あとから高額な運搬費を請求されたり、回収した物が不法投棄されたりする事例につながります。

遺品整理士は一般社団法人遺品整理士認定協会の民間資格で、国家資格ではありません。この資格があるから廃棄物を運べるわけではないため、許可の有無とは別に見てください。

その場で買い取られても、8日以内なら断れる

業者が自宅を訪問して物品を買い取る「訪問購入」には、契約書面を受け取った日から8日間のクーリング・オフがあります(特定商取引法)。

その間は物品の引き渡しを拒めますので、貴金属や着物をその場で持ち帰らせない選択もできます。

値段に納得できないまま押し切られたときは、契約書面の日付を確認してください。

親が存命のうちに業者へ頼む場合の選び方は生前整理業者と遺品整理業者の違い、自治体の回収で出せる分を増やすなら粗大ごみの申込みから収集までの流れで解説しています。

四十九日や賃貸の解約期限が迫るときは、書類の回収を先に済ませる

時間がない状況では、片付けの順番を組み替えます。先に動かすのは物ではなく紙です。

手続き期限起算日
相続放棄・限定承認3か月自分のために相続の開始があったことを知った時
準確定申告4か月相続の開始を知った日の翌日
相続税の申告・納付10か月相続の開始を知った日の翌日
相続登記3年不動産を取得したことを知った日

四十九日と納骨で2〜3か月が過ぎるため、相続放棄の判断に使える時間はそれほど残りません。

財産の調査が終わらないときは、3か月の期間内に家庭裁判所へ伸長を申し立てられます。

期限を過ぎてからでは申し立てそのものができなくなります。

賃貸なら、契約書の解約予告期間を先に読む

賃貸の実家は、退去日が法律ではなく契約で決まります。

解約予告が1か月前なのか2か月前なのか、原状回復の範囲はどこまでか、契約書を先に開いてください。

予告を出した日から家賃の発生する期間が確定するので、作業日程はそこから逆算します。

管理会社に事情を伝えれば、鍵の返却日を調整できる場合もあります。

放棄を検討しているなら、売る・捨てるをしない

期限に追われていても、相続財産の処分は単純承認とみなされます。

家財を売ったり廃棄したりすると、放棄の道が閉じます。

退去期限と放棄の検討が重なったときは、自己判断で運び出す前に弁護士か司法書士に相談する段階です。

書類の回収と、傷むもの(食品・生ものの入った冷蔵庫)の処理までで手を止めておきます。

仏壇・位牌・遺影は家財と分けて、引き継ぐ人を先に決める

墓・仏壇・位牌などは祭祀(さいし)財産と呼ばれ、預金や不動産とは別の枠で1人が引き継ぎます(民法897条)。

遺産分割の対象ではないため、兄弟で分けるものでもありません。

指定がなければ慣習により、それでも決まらなければ家庭裁判所が定めます。

相続放棄をした人でも祭祀の承継者にはなれますので、財産は受け取らないが仏壇は自分が見る、という形も取れます。

処分の前に、この引き継ぐ人を決めてください。

誰も引き取らないまま業者へ渡してしまうと、あとから兄弟の間で話が蒸し返されます。

仏壇を手放す際の作法は宗派と寺院で扱いが異なるため、菩提寺(ぼだいじ)があれば先に相談します。

人形や写真については、自治体の分別区分に従う方法と、寺社で供養してもらう方法があります。

どちらを選ぶかは、家族が納得できるかどうかで決めて構いません。

遺骨が家にあるなら、移す先を決めてから

自宅に遺骨が置かれている家もあります。

これを別の墓へ納める場合、遺骨を移す手続きには現在の墓地がある市区町村が発行する改葬許可証が必要です。

申請には受け入れ先の受入証明書と、現在の墓地管理者の埋葬(まいそう)証明書が要るため、受け入れ先が決まらないと申請そのものができません。

許可証なしに遺骨を動かすのは墓地埋葬法違反にあたります。

片付けの流れで箱ごと運んでしまわないよう、遺骨だけは別扱いにしてください。

断捨離を先送りした実家は、空き家の税と登記の過料で費用が増える

全国の空き家は約900万戸、空き家率は13.8%で過去最高になりました(総務省 住宅・土地統計調査/2023年)。片付けを止めたまま人の住まない家が残ると、費用は減らずに形を変えて戻ってきます。

固定資産税は、指定と勧告を経てから上がる

放置すれば自動的に税額が上がるわけではありません。

倒壊のおそれや衛生上の問題があると市区町村が判断すると「特定空家」に、そうなるおそれがある状態だと「管理不全空家」に指定されます。

そのうえで勧告を受けると、住宅用地の特例(6分の1)が外れます。

段階を踏む仕組みですが、庭木が越境して近隣から苦情が出るところから始まることが多く、遠方に住んでいると気づくのが遅れます。

相続登記は3年、旧相続分は2027年3月31日まで

相続登記は2024年4月1日から義務になりました。

不動産を取得したことを知った日から3年以内に申請しないと、正当な理由がないかぎり10万円以下の過料の対象です。

2024年4月1日より前に相続した不動産も対象で、こちらの期限は2027年3月31日です。

名義が親のままかどうかは、法務局で取れる登記事項証明書の甲区(所有権に関する事項)を見れば分かります。

売るつもりなら、家財の撤去は避けて通れない

相続した空き家を売った場合、譲渡所得から最大3,000万円を控除できる特例があります。

1981年5月31日以前に建築された家屋であることなどの要件があり、対象は2027年12月31日までの譲渡です。

相続人が3人以上のときは、2024年1月1日以降の譲渡で1人あたり2,000万円に下がります。

要件の判定は個別事情で変わるため、税理士か税務署の事前相談で確認する段階になります。

いずれにしても、家財が残ったままでは引き渡しができません。

撤去費は先送りしても消えず、その間の固定資産税と管理の手間が上乗せされます。

売却以外の選択肢を含めて考えるなら、空き家バンクの登録条件と使い方で解説しています。

よくある質問

親が片付けを嫌がります。何から切り出せばいいですか

物の話からは始めないでください。

最初に決めるのは、捨てる物ではなく作業の範囲です。

物置や使っていない部屋のように、親の生活が変わらない場所から提案します。

そのうえで、通帳や保険証券がどこにあるかだけは聞いておいてください。

これは片付けの話ではなく、入院や介護が必要になったときに家族が困らないための確認として切り出せます。

親の物を勝手に捨てるのは法律違反になりますか

親が存命であれば、家財の所有者は親です。

同意なく処分すれば他人の財産を捨てたことになります。

亡くなったあとも、遺産分割が終わるまでは相続人全員の共有財産です。

一人の判断で価値のある物を処分すると、あとから精算を求められることがあります。

作業そのものは代表者が進めて構いませんが、金目の物と思い出の品は写真を撮って共有しておいてください。

遺品整理士の資格がある業者なら、廃棄物を運べますか

運べません。

遺品整理士は民間の認定資格で、廃棄物を扱う権限とは別です。

家庭から出た不用品を運搬・処分するには市区町村の一般廃棄物収集運搬業の許可が、買い取るには古物商許可が要ります。

見積書か契約書に許可番号が書かれているか、どの市区町村の許可かを確認してください。

賃貸の実家で、退去まで1か月しかありません

先に契約書を開いて、解約予告の期間と原状回復の範囲を確認します。

次に書類と貴重品を回収し、そのあとで業者の見積もりを取ってください。

搬出は最後です。

相続放棄を検討しているなら、家財を売ったり捨てたりすると放棄ができなくなるため、運び出す前に司法書士か弁護士に相談する段階になります。

兄弟が遠方で来られません。一人で進めてよいですか

作業を一人で進めること自体に問題はありません。

ただし、分割前の家財は全員の共有です。

着手前に部屋ごとの写真を送り、欲しい物があるかを聞いておいてください。

処分費の負担割合も、作業前に決めておくほうが後々の話が短く済みます。

現金や貴金属が出てきたら、見つけた人が持っていていいですか

いけません。

タンス預金も貴金属も相続財産です。

金額と点数を記録し、相続人全員に共有したうえで、遺産分割の対象に含めてください。

相続税の申告が必要になる場合、申告漏れの原因にもなります。

基礎控除は3,000万円+600万円×法定相続人の数で、これを超えるかどうかは家財を含めた財産の総額で判断します。

まとめ

実家の片付けで最初に確かめるのは、目の前の物が親の財産なのか、相続人全員の財産なのかという点です。

親が存命なら判断は親が出し、家族は作業を手伝う側に回ります。

亡くなったあとは、通帳・権利証・遺言書・貸金庫の鍵を回収してから袋詰めに入ってください。

相続放棄を考えている段階で家財を処分すると、3か月の期限を待たずに放棄の道が閉じます。

費用は量と階数、そして分別をどこまで自分でやるかで動きます。

金額の比較より先に、一般廃棄物収集運搬業の許可と追加料金の条件を書面で確かめるほうが、当日の増額を防げます。

ぜひ本記事の「捨てる前に探すもの」の一覧と見積書の確認項目を手元に置いて、次に実家へ帰る日の作業範囲から決めてください。

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